基金の財政運営
財政運営
確定給付企業年金は、基礎率(予定利率、予定死亡率、予定脱退率、予定新規加入者等)を前提とし、将来の支出と収入のバランスが保たれるよう給付や掛金の設計を行い、「事前積立方式」により、掛金の拠出及び年金資産の積立を行っています。
しかしながら、実際に基礎率どおりに推移することはなく、予定と実績の間に乖離が生じ、不足(剰余)が発生することになるため、財政決算や財政検証により、不足(剰余)の状況をチェックしています。
また、財政再計算により、定期的に前提とする基礎率そのものを洗い替えた上で掛金の再設定を行っています。これらに関する一連の適切な措置を実施していくことを財政運営といいます。
- 発足時に給付に見合った掛金を設定
- 時間の経過とともに予定と実態の間に乖離が生じる
- 毎年年金財政が健全に推移しているかを検証する・・・財政検証
- 5年毎に実態に即した方向に修正・・・財政再計算
(1)財政決算
財政決算では、財務諸表を作成して財政状況を把握するとともに、財政検証を行い、掛金の見直しや追加掛金の要否等を判定します。具体的には「継続基準」と「非継続基準」の財政検証によって積立不足と判定された場合、それぞれの積立不足の状態への対応を行います。
- 財産の増減及び異動並びに収益及び費用をその発生の事実に基づいて経理する【施行規則110条(経理の原則)】
- 当基金の事業年度は、4月1日から翌年3月31日
- 決算報告書及び事業報告書を事業年度終了後4ヶ月以内に厚生労働大臣に提出
(2)財政検証
継続基準
継続基準による財政検証は、基金が今後も継続していく上で、年金資産が計画どおり積み立てられているかどうかの検証で、毎事業年度の決算において行います。
純資産が「責任準備金(将来の給付のために現時点で保有しておかなければならない理論上の積立金)」を下回る場合は、継続基準に抵触することとなり、純資産が「責任準備金ー許容繰越不足金」を下回る場合には、掛金の額を再計算しなければなりません。
当基金の令和4年度財政検証結果
純資産/責任準備金=1.26(基準値1.0以上) |
非継続基準
非継続基準による財政検証は、仮に今、企業年金が終了した場合においても、過去の期間分の給付に見合う積立金が確保されているかどうかの検証で、毎事業年度の決算において行います。
純資産額が「最低積立基準額(これまでの加入者期間に係る給付(最低保全給付)の支払総額を現在価値に割引計算した金額)」を下回っている場合には、次のいずれかの方法により掛金を拠出しなければなりません。
1. 積立比率に応じた方法
2. 回復計画による方法
当基金の令和4年度財政検証結果
純資産/最低積立基準額=1.20(基準値1.00以上) |
積立超過の検証
掛金が損金算入される制度であり、法令上、「積立上限額」(数理債務の1.5倍と最低積立基準額の1.5倍とのいずれか大きい額)が定められています。
当基金の令和4年度財政検証結果
積立金(純資産)が「積立上限額」を下回っており、これまでどおりの掛金拠出による 積立を継続できます。 |
(3)財政再計算
確定給付型の企業年金は長期にわたる制度であり、正確な数理計算に基づき健全な財政運営を確保することが必要です。時間の経過とともに予定と実績の間には乖離が生じることから、少なくとも5年ごとに掛金の算定の前提となる基礎率を見直し、その結果に基づいて掛金の再計算を行わなければなりません。
なお、上記の定期的な掛金の見直しだけでなく、継続基準への抵触、給付設計の変更、加入者数の大幅な変動などに伴う掛金の見直しも財政再計算といいます。
- 財政再計算は5年毎(当基金の第2回目の財政再計算は令和8年3月31日基準日で行います。)
年金数理人制度
年金数理人制度は、改正前厚生年金保険法(第130条の3、第159条の3)に基づき、昭和63年9月に導入されました。その目的は、年金数理の専門家である年金数理人が、企業年金等の財政運営が適正な数理に基づいていることを確認することにより、加入員等の受給権を保全し、年金財政の健全性を確保することにあります。
※指定年金数理人制度
平成9年度の財政運営基準の導入により始まった制度。個々の企業年金等の実情を踏まえつつ、その財政状況を継続的に診断し、指定された年金数理人が財政に関して継続的な診断・助言を行います。
事業主等(基金)は、適正な年金数理に基づいて、給付の設計、掛金の額の計算及び決算を行わなければならない。(確定給付企業年金法第96条)